エピソード5 目と目が合う
様々な運転士さんの話です。
事故の瞬間、衝突の瞬間はその人と目が合う事があるそうです。人身事故と言っても状況は様々です。踏切内や駅のホーム上が大半を占めているように感じますが、こ線橋の上から降ってくるなんて話も聞いたことがあります。
また、うずくまっていたり、後ろ向きで立っていたり、寝そべっていたり、正座して拝んでいたり、それも様々です。
運転台というのは皆さんが思っている以上に高いものなので、地上から運転台を見上げると空を見上げるような角度のイメージになります。
それでも目と目が合うそうなのです。
もっとコワいのは、ホーム進入中にホームから飛び込んでくる場合、タイミングによっては運転台の目の前に顔があり、運転台のフロントガラスから衝突するなんてこともあります。
それでもやはり目と目が合ったりするそうです。
最期の表情を見届ける運転士さん、本当にお疲れさまです。
ちなみに、下りでやって上りでもやったという、一往復二回制覇という伝説を持っている運転士さんもいます。しかも、そのうちの一回は親子心中だったそうです。
鉄道乗務員でも、事故の体験がやたら多い人とそうでない人がいます。引きが強い人は良く人身事故にあたります。
駅時代のあるあるなのですが、今日はあいつが出勤しているから、今日は何かあるんじゃないか~!なんて冗談で言ったりすると本当に人身事故や停電、地震などがおこる事はよくあります。
なので暗黙の了解で不吉な事はなるべく言わないようにするという人が多いです。
悲しい人身事故…本当に無くなって欲しいです。
エピソード6 瞬間は記憶に残る
これは私自身の話になります。
当時電車通学の高校生だったので人身事故というワードには慣れていましたが、目の前で人がホームから線路へ吸い込まれる様子を目撃したことは今でも印象に強く残っています。朝の通勤ラッシュ時間帯でしたので、ホームにはたくさんの人でいっぱいでした。次の電車は短い編成なので電車が停まらないところがありますが、その女の人は電車が停まらない誰も並んでいないところで立っていました。電車が進入中に汽笛の音が響いた瞬間、その人は線路に落ちていってしまったのです。落ちるというよりは吸い込まれるという印象を受けました。キーンと一瞬空気が凍るという感じがありました。それにも増して一番怖かったのはホームと電車の間をのぞき込む群衆がたくさんいた事が怖かったのを覚えています。野次馬というか無惨なモノを目で見て確かめたいという事なのでしょうか?救い出そうという意図は全く感じられない奇妙な人々の行動でした。
仕事をするうえで、バラバラになった遺体を片付けることを経験しましたが、高校生の時に目撃した事故の瞬間は今でも強烈に印象に残っています。
生きて動いていたものが、一瞬で死んで動かなくなる…
鉄道自殺はいいものではないな、普通にそう思います。
当たり前ですが…