話が違うじゃん
不可解な点とは言い過ぎなのですが、本で読んだ事と思っていた事と実際の状況は違っていたので紹介してみたいと思います。
一番感じた相違点としては、
1痰吸引はさほど嫌がらない
2医療介護側からの執拗な延命工作は無かった
3認知症っていい事もある
では見ていきます。
〇痰吸引は嫌がらない
この痰吸引はめちゃくちゃ苦しがり、複数人数で本人を押さえつけて一気に行うといったような描写が多いのですが、うちの場合は嫌がるけれどそこまで嫌がらなかったという事です。
うちの場合は認知症が進んでいたので、そのせいなのかはわかりませんが、言葉も発しない毎日うつろな状況でした。
きっと本人からしてみれば痰吸引は苦しくて辛いのでしょうが、見ている側からすると反応が極端に鈍いので声も出さないし、手でホースをはねのけようとはするが動作がとても遅くほぼ無反応、本人は何が起きているのかも理解できないといった具合でした。
〇病院介護側からの執拗な延命措置の無理強いは無かった
リビングウィルやACPは必要なかった
これも本を読んでいると、医療はもちろん介護の業界もサービスを提供して利益を追求しているので、人が死んでしまえば顧客が一人減ることになります。
とにかく一日でも永く生かして利益を求める。
家族側というと、年金目当てに爺さんを無理やり生かす事に全集中!
死んだら死んだでワンチャン病院や施設へ訴訟を起こして一攫千金狙い!
そこで病院や介護事業者などは延命を無理強いしてくるそうですが、うちでは全く無かったのです。
延命治療の拒否を日頃から口頭で述べたり、簡単な書類にサインするだけですんなり延命拒否の意志が通りました。
レスパイト入院中に、
「容体が安定している今帰らないと自宅へ返すことができなくなるから、自宅に帰りたいなら今がチャンスですよ」
って病院から言われたそうです。
このチャンスを逃す訳にはいかないゾ、と家族は皆思ったのでした。
〇認知症のメリットが最大限に引き出された
認知症のメリットってあるんだ~と深く唸らせたこと、それは
痛みや苦しみ悲しみを緩和してくれる ハズ…
死への恐怖感を緩和してくれる ハズ…
痰吸引のところでも述べましたが、うちの場合では痛がることをさほどしなくなりました。
言葉も発さないので夜中に大声を出す訳でもなく、近くにいる人を罵倒することも無く、赤ちゃんのようにくうくう寝ている事がほとんどで、起きたかと思ったらきょろきょろ周りを見渡して、また寝てしまうそんな状況でした。
後から調べてみると、死の前兆として寝ている事が多くなるそうです。
また、ハッキリクッキリ最後の感謝の言葉を遺していないので、別れがグラデーションのようにやってきて喪失感はさほど感じなかったのです。
以前私は、最期の言葉をはっきり遺して死ぬ事がいちばんなのだと豪語していたのですが、認知症の場合だと反応がぼんやりしているので、最期をというものを受け取る方もぼんやり状態。
ボンヤリ状態のお別れ、それはそれでいいのかもしれない、手を取り合って後は頼んだぞって死んでゆくそのはっきりした印象はいつまでも強烈に遺ることでしょう。
どちらがいいかとはわかりませんし、選べませんのでその時のお楽しみとしてとっておきましょう。